スイス・ストルツメディカル本社コートヤード
Storz Medical AG
- コンセプト・雑感
- ランドスケープのみ、日建設計で単独受託。 スイスの最先端医療機器メーカーのストルツメディカルからの引き合いで、 スイス本国の新築計画中の本社ビルの中庭に、日本庭園をしつらえたいという話。
建築はドイツの建築家でGunter Hermann氏 率いる Gunter Hermann Architekten。場所は、ドイツとの国境に位置するボーデン湖と言う、ライン川の源流の湖の畔で、田園地帯。
現場確認と施主打ち合わせに現地を訪問してたまげたのは、「ガラス張りのモダンなビルのすぐそばまで、近在の村のFarmerに野菜畑として耕作を継続してもらう」計画であり、「この畑の風景は四季感あふれる美しいランドスケープそのもので、維持管理費を払わなくても農夫がいつも綺麗な状態にしてくれる。それを景として楽しむのだ!」と施主がのたまわったこと。ランドスケープの本質を正に言い当てて妙。良き施主を得たと思った瞬間であった。
チューリッヒ空港から現場のクルツリンゲンまでの道すがらの景色の中に、日本の痩せ尾根に生えるアカマツ林に良く似たマツ林が多数見られた。今回のプロジェクトは建物の階数は5階程度だが、中庭は建築に取り囲まれ陰になるので結構暗いことが予想される。この手の腰の高いマツを使い、1階、2階では幹を楽しみ、光の入る3階、4階ではマツの枝葉を見てもらうようにしようと、考えた。
スイスの造園植物材料は、ほとんど全てドイツからの輸入品。圃場を作るにも国土が狭いので効率が悪すぎるのだそうだ。結局ドイツの大手のホールセールナースリーで選んだ。石はアルプスの氷河が削りだした力強い岩石を、グランドカバーはマツ林の下に生えるのと同類の苔を移植して再利用した。敷き砂利は、ライン川の川底を浚渫して浚渫土からコンクリート骨材を選別収集している大きな川砂利プラントで入手。
とにかく、現地に在りモノで工夫しながらの設計作業、監理作業。最後には自分で石を刻む、楽しいプロジェクトとなった。 - 基本情報
- 場所:Lohstampfestrasse 8 8274 Tagerweilen Switzerland
- 竣工:2006年10月
- 規模:15ha
- 内容:基本設計、実施設計、設計監理
- 設計監理:Gunter Hermann Architekten
- ランドスケープ:三谷康彦(元日建設計)